旧梅田診療所は、昭和初期の開業医の診療施設の姿をよく留める建築として、平成16年に国の有形登録文化財に登録されました。洋館の登録手続きをお手伝いしたことから、私にとっても思い入れのある建物でした。多摩のあゆみでの連載「建築雑想記」もこの洋館の縁でした。立川駅から徒歩5分という好立地から、敷地全体を含んだ再開発のため2012年12月に解体が決まりました。文化財保護審議会稲葉和也先生の指導のもと、立川市教育委員会で旧梅田診療所の記録調査が実施されました。歴史的建造物に明るい建築士が2日間かけて実測調査を行い、TownFactory酒井がまとめを担当しました。
■調査の内容
・実測調査:平面、南面・西面の立面、断面、小屋伏、天井伏、応接室の展開
・写真撮影:現状の建物、敷地
■調査の経緯
・11月01日 現地下見
文化財保護審議会委員:稲葉和也
歴史民俗資料館:小川始、斎藤隆
建築士:酒井哲
カメラマン(歯科医師):伊藤龍也
・11月27日 現地調査
文化財保護審議会委員:稲葉和也
歴史民俗資料館:小川始、斎藤隆
建築士:内田セツ子、大塚哲也、酒井哲
カメラマン(歯科医師):伊藤龍也
・11月28日 現地調査
歴史民俗資料館:小川始、斎藤隆
建築士:金田正夫、酒井哲、十川百合子、田村公一
写真家:伊藤龍也
・12月 解体時記録(メダリオン取り外し立ち会い、写真撮影)
建築士:酒井哲、田村公一
カメラマン(歯科医師):伊藤龍也
・2013年3月 緊急調査報告書まとめ
酒井哲
・2015年 サービス付高齢者向け住宅「SOMPOケアそんぽの家S立川」竣工
1階のロビー天井に梅田診療所のメダリオンが取り付けれられている
※旧梅田診療所は惜しくも解体されてしまいましたが、登録有形文化財になっていたからこそ、このような緊急調査を立川市教育委員会が行なうことができました。大半の近代建築が人知れず姿を消して行く中で、建物の記録を残すことができたのは、登録有形文化財の力です。建物は無くなってしまいましたが登録の意義は高かったと言えます。
【関連】建物雑想記:登録有形文化財・旧梅田診療所の話
歴史的建造物(登録有形文化財)、近代建築、現況記録調査、昭和レトロ、上げ下げ窓、洋館