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建築と敷地のつながり 自由学園南沢キャンパス 

  • 酒井哲の何でもノート
  • 2014.12.14
自由学園南沢キャンパスを神楽坂建築塾で訪れました。以前多摩のあゆみの取材で見学したことがあるので、2回目の訪問です。今回は建築家の宮井昭隆氏の案内でキャンパスを丁寧に歩きました。以前は遠藤新と遠藤楽の建築に感動するあまり、細部に目が行ってしまい全体を捉えることができませんでしたが、敷地と建物の関係をじっくりと見てきました。
自由学園南沢キャンパスキャンパスは初等部、女子部、男子部、大学部と4つの部で構成されされており、各部は中庭を囲うように左右対称の建物が並びます。キャンパスと言うと正門から繫がるメインストリートが通り、その左右に校舎が整然と配置されるアカデミックなイメージがありますが、南沢キャンパスには軸線のような通りがなく、林の中の散策路が回廊のように全体を繋いでいました。遠藤新は「敷地を建築」と捉え、10m程ある敷地の高低差や植生を巧みに読み込みながら設計したとのことです。

遠藤新と同じ時期にライトに師事した建築家A・レーモンドも、やはり独立後、東京女子大学のキャンパスを設計しますが、こちらはキャンパス全体が強い通中心性のある配置となっており、中庭の正面にはライト風の本館が鎮座します。遠藤新の南沢キャンパスも各部を見ると中庭を囲う左右対称の建物レイアウトになっており、中心性を持った配置ではありますが、建物のスケール感や意匠は権威的な印象ではなく、包まれるような安心感を産んでいるように思えました。同じ手法でも、配置や構成によって感じ方が変わるので興味深いです。

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女子部の食堂では暖炉に火をくべてもらいました。炎がきれいでした。特に何もなくても暖炉を見ているだけで幸せな気分になりますね。暖炉にきれいな炎が出るか出ないかは煙突の設計によるとのことで、遠藤新は暖炉設計の名手だったようです。暖炉周りのこぢんまりとしたくつろぎ空間をイングルヌックと言いますが、先日見学した加地邸にもいい感じの暖炉がありました。いつかはそのような場所をつくってみたいものです。また細部に話が脱線してしまいました……。自由学園の南沢キャンパスは素敵な場所でした。このような学び舎で過ごすことができたら、幸せだろうと素直に思いました。