防火、準防火地域外であれば10m2未満の増築は確認申請の必要がないので増築可能です。防火、準防火地域での増築や10m2を超える増築を行う場合は、確認申請が必要となります。増築を検討している建物の建築時の検査済証があれば、増築の確認申請の手続きに進めます。一方、検査済証がない場合は増築のハードルが高くなりますが、検査済証のない建物でも増築を可能にする方法はあります。
増築の確認申請を出すためには、既存住宅が検査済証を取得していることが前提になります。これは既存の住宅が建築基準法関連法規に対して適法でなければ増築を認めないというルールです。建物を新築する場合は新築の確認申請を行い、竣工後、申請通りに建物が建ったことを証明する検査済証を取得します。実は住宅規模の建築では検査済証を取得していないケースが昔はよくありました。現在のように検査済証の取得が徹底されるようになったのは、耐震偽装問題が公表された2005年以降です。
検査済証が無いということは、新築時に確認申請通りに竣工したかどうか不明ということです。逆に既存建物の調査(法適合状況調査と言います、特定行政庁によっては建築基準法12条5項報告として書式を定めている場合もあります)によって建築時に合法に建てられたことを示すことができれば、検査済証のない建物でも、増築へのステップと進むことができます。上記の報告書は、検査済証とみなされるものではありませんが、「既存不適格調書」の添付資料として活用することができ、増築の確認申請へと進むことができます。しかしながら、違法性のある建物は、法適合状況調査で不適合となり、不適合部分を是正しない限り、増築ができないので注意が必要です。既存の建物の増築は、状況を整理した上で、計画を進めることことが重要です。
◎増築確認申請までの流れを整理すると以下のようになります
■検査済証が無い!!
↓ ↓ ↓
■既存の建物の現況調査報告書や建築基準法12条5項報告(→建築士に依頼して作成:TownFactoryで調査できます)
面積、耐震、防火性能等が建築基準法に適合しているか調査します。
※違法建築だった場合は、違法部分を是正しない限り、この先には進めないケースが多く、特に建ぺい率や容積率の違反は要注意です。
↓ ↓ ↓
■法適合状況調査(→現況調査報告書を基に、特定行政庁や指定確認検査機関で内容を調査)
↓ ↓ ↓
■既存の建物の現況を「適合」と判断
↓ ↓ ↓
■既存不適格建築物等調書
※オレンジ本の改定で特定行政庁の書式から法12条5項報告による
「既存建築物調査結果報告書」を提出する流れに変わりつつあります。
↓ ↓ ↓
■増築の確認申請書
既存不適格調書の大前提となるのが既存建築の検査済証で、上記フローはこれに代替するルートです。竣工時に取得した検査済証の年月日を「基準時」といい、基準時以降、建築基準法関連法規が改正され不適格になっている部分(「既存不適格」という)をリストアップするのがこの調書です。増築計画で、既存不適格部分をどこまで現行法規にあわせるかが増築の焦点となりますが、最近はかなり柔軟な対応ができるようになりました。ここまでくれば、後は新築の確認申請の手続きと大差ありません。
検査済証がなくても増築は可能ですので、まずは気軽にご相談ください。
※上記の内容は、木造の四号建築物(木造2階建などの、建築基準法6条第1項第四号に規定する小規模建築物)を想定して説明しています。
※残念ながら検査済証の無い物件は違法建築であるケースが多いため、増築や用途変更に進むためには、違法性のある部分の是正が必要となります。このようなことから、行政手続きのみのでは現況をクリアーすることはできず、増築等の調査・設計そして監理まで含めて一緒に進めないと問題は解決できないと考えております。
※新築時に構造計算が必要な鉄骨造、鉄筋コンクリート造で検査済証が無く、さらに設計図書や構造計算書と部材強度等を評価する試験報告書がない場合は、設計図書の再現、構造計算や試験をやり直さなければ、既存の建物の構造強度を把握することは難く、想定以上の費用と時間がかかります(新築並みの設計費用)。
もちろん費用がかかっても方法はあります。なお弊所は主に多摩地域で活動しているてため、都心の案件は以下の事務所に問い合わせいただけると話が早いです。
検査済証無案件の実績が豊富な (株)寺田建築事務所
※平成26年7月に国土交通省から「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」が策定・公表されました。民間機関での手続きが可能になったので門戸は広がりましたが「既存の建物の現況調査」の内容を緩和した訳ではないので、ハードルの高さは変わっていないのが現状です。
※オレンジ本2019年版:建築構造設計指針 東京都建築構造行政連絡会監修