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神楽坂建築塾発 住まいづくり店2014

  • セミナー・展示会
  • 2014.06.11
kiokutofuukei
6月13日(金)から神楽坂のアユミギャラリーで
「神楽坂建築塾発 住まいづくり店2014」が始まります。

神楽坂建築塾は、1999年の開塾以来、人の生活と建築の関係性を〈住まい〉、〈場所〉、〈まち〉、〈旅〉など、様々な切り口で語らい、学んできました。この建築塾で活動する9人の建築家が、それぞれのフィールドで設計した住まいの事例や活動を、今年は〈記憶と風景〉に視点をあてて紹介します。人の生きる住まいは深く場所と関わっていきます。どこに住むか、どこで生きるか。場所の記憶を辿り、居場所をつくる住まいについて、みんなで考えていきたいと思います。

場所:アユミギャラリー:東京都新宿区矢来町114
開催期間:06月13日(金)〜06月18日(水) 11:00〜19:00
参加建築家:青山恭之、岸成行、齋藤祐子、酒井哲、佐奈芳勇、鈴木喜一、藤原成暁、三浦正博、渡邉義孝

酒井は地元日野市で取り組んでいる「仲田の森遺産発見プロジェクト」の活動を紹介します 。

日野市には明治末期から昭和55年まで蚕糸試験場という蚕を研究する農林省の施設がありました。試験場の閉鎖で大半の研究施設は解体されましたが、唯一「第一蚕室(桑ハウス 市民から愛称で呼ばれています。)」が当時の姿のまま現在も残っています。第一蚕室は養蚕農家によく見られた煙抜き(越屋根)のある外観で、養蚕の盛んだった多摩地域の当時の面影を見ることができます。残念ながら東京郊外の日野市では、数多くあった養蚕農家を現在では見ることできません。一面に広がっていた桑畑も宅地に変わってしまいました。期せずして残った「第一蚕室」が蚕と生活を共にしていた時代の「記憶と風景」を物語っています。


建物をつくることは、その場所の風景に新たな要素を付加させることでもあります。その場所の風景は地形と植物が織りなす世界に人間の営みが付加された状況といえ、人の営みが土地と密接な関係にあった時代は、建物も地域性が反映されていました。第一蚕室は研究施設でしたが、研究対象が蚕ということで、養蚕農家と似た外観となったこととは想像に難くありません。蚕を育てるためには、桑が必要ですが、この地域が桑畑に適した場所でした。現在では養蚕農家は無くなりましたが、絹が使われなくなった訳ではなく、養蚕の場所が海外に移りました。そして、生産する場所が生活から分離され、消費する場所へと変化しました。建設される建物も同様に用途が変わり、消費を促す建築へと変化し、今のような住宅地と商業施設のある風景となりました。

風景の中に昔の土地の記憶が残っているものだと思っていましたが、土地の生活者の生業が変化した場合は、風景も変わって行くのは自然な流れなのかもしれません。しかしながら、その変化の速度が早すぎたり、リセットされると人は記憶喪失になり、その土地の記憶の時間軸が折れてしまします。世代間で風景を共有するために、街の中に世代を超えて使える建物をいくつか残すことは大切なことだと思います。未来永劫に残すような大げさ話ではなく、寿命がくるまでしっかりと建物を維持管理して使うことが重要なのだと思います。

日野市ではJR豊田駅前再開発で年末にイーオンがオープンする予定です。街が活性化する事業として楽しみにしていまが、再開発だけでは風景も記憶も維持できません。それと同時に「第一蚕室」のような建物の存在も大切です。土地の生き字引として再生され利活用されることを期待しています。展示会では仲田の森遺産発見プロジェクトの2009年からの取組みを展示します。お時間がありましたら是非ご覧下さい。