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有機的建築 加地邸

  • 酒井哲の何でもノート
  • 2014.12.01
葉山加地邸-1遠藤新の設計で知られる、葉山の加地邸(昭和5年建築)を見て来ました。11月30日までの2ヶ月間週末限定の見学会だったのでギリギリ最終日に間に合いました。

多摩のゆみの取材などで、大正から昭和初期に建てられた洋館を見る機会がよくありますが、加地邸は同じ時代に建てられた洋館とは別格の建物でした。それは単純に、見よう見まねで建てられた工務店による洋館と建築家の設計した建物との違いではないようです。

実はこの日、同じ葉山で昭和初期に建てられた東京帝国大学出の建築家の設計による洋館の実測調査に参加していたので、同日に2棟の洋館を見ることのできた恵まれた一日でした。実測した洋館は、建物のプロポーションも美しく、内外部とも細部までこだわって設計されたイギリス田園風の建物でした。外観を見ただけで、嬉しくなってしまうような誰もがイメージする素晴らしい洋館ですが、その後に加地邸を訪れ、違いに俄然としました。

遠藤新は「有機的建築(organic architecture)」を提唱したフランク・ロイド・ライトの一番弟子で、ライトの建築思想を日本で実践した建築家です。加地邸は丘陵地に建てられた住宅ですが、高低差のある土地を巧みに建物の中に取込み、細部のデザインから、部屋の装飾、外部、さらに周辺環境まで、全体がしっくりと繫がった空間ができあがっていました。

実測した洋館は、建築史の一コマを飾る古典として、感動に値しますが、加地邸は時間を超えた普遍的な空間の豊かさを感じることのできる住宅でした。明治から続く様式建築の流れを継ぐ傑作と、そのような流れの装飾を排除したモダニズムの建築家の傑作、同時代に建てられた洋館を見ることで、改めて「有機的建築」という言葉を体感した一日でした。

葉山加地邸-2
※有機的建築の理念:全体は、全て必要とされる部分によって構成される
参考:建物雑想記「有機的な校舎 自由学園南沢キャンパス